行政書士事務所 ほりうち

福岡市で行政書士をしています。 

福岡市で障がい者グループホーム(共同生活援助)を開設するために⑦

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福岡市の行政書士ほりうちです。

ブログにご訪問いただきありがとうございます。

 

昨年から記事を書いていた「共同生活援助サービス」(障がい者グループホーム)について、今日は「費用」の計算についてお話をします。

 

お話することは以下の3点です。

 

1.費用の内訳

2.人件費の計算

3.損益の分岐点を見極める

 

 

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1.費用の内訳について

 共同生活援助サービスにおける主な費用は以下の3つです

 

1.人件費

2.家賃・光熱費等

3.通信費、広告費、雑費

*開設にあたり融資等を受けた場合は「借入金の返済」が加わります。

 

 2.「家賃・光熱費等」は利用者から実費を負担してもらうので、計算は難しくありません。但し空室の家賃は事業所の負担になります。

 

3.「通信費、広告費、雑費」は、電話やWI-FI、Webサイト作成費用、その他の雑費です。

 

2と3は目安となる額の計算はあまり難しくありませんが、人件費は少し計算が複雑です。これを次の項でお話ししていきます。

 

2.人件費の算定について

 2-1 前提条件

 2-2 常勤換算について

 2-3 必要な人員を算出する

 

2-1 前提条件

 ①365日人員の配置が必要

共同生活援助(グループホーム)は利用者の共同生活を援助するサービスです。

そのため、365日人員の配置が必要となります。

(日中サービス支援型の場合は24時間の支援も加わります)。

 

 ②必要な人員の配置が定められている

以前ブログの②でお話ししたように、共同生活援助(グループホーム)を運営するためには、必要とされる職員と最低必要な人員配置が、厚生労働省から発せられた省令を基準として、各自治体の条例で定められています。

 

その基準をもとに、必要な人員・勤務時間を算出します。それで大まかな人件費がわかります。

 

 【介護サービス包括型の基準

 

・管理者  常勤1名(他の職務にも従事可能)

 ・サービス管理責任者  利用者が30人以下→1名  31~60人以下→2名

 ・世話人  常勤換算で利用者の数を6で除した数以上

 ・生活支援員 常勤換算で 

   障害支援区分3の利用者数を9で除した数

  障害支援区分4の利用者数を6で除した数

  障害支援区分5の利用者数を4で除した数

  障害支援区分6の利用者数を2.5で除した数 の合計数以上

 

これが最低限必要な人員です。

 

*日中サービス支援型の場合は他に、1人以上の夜間支援従事者が必要とされます。

 

2-2 常勤換算についての説明

「常勤」: 当該事業所での勤務時間が、事業所で定められている「常勤の人が勤務すべき時間数」に達していること 

 

例:1日8時間・週5日勤務と定められている場合 → 週40時間=常勤(1人)

*事業所によってもっと常勤の勤務時間が短い場合もあります。32時間を下回る場合は、32時間を基本として計算します。

 

「常勤換算」:従業者の延べ勤務時間数を、上記常勤者が勤務すべき時間で除することで、

事業所の従業員の員数を、常勤の従業者の数に換算する方法のことです。

 

*例:週40時間が常勤の場合 

施設で週の延べ勤務時間が60時間 60÷40=1.5人(常勤換算)と計算します。

 

 

2-3 必要な人員を算出する

 

前回⑥で試算した例で計算してみます

「介護サービス包括型」

世話人4:1で配置、夜間支援員配置、常勤40時間 の場合

 

*障がい区分3 ×名の場合

 ・管理者 兼 サービス管理責任者(常勤) 1名

世話人 40h×(6÷4)=60h (常勤換算1.5名)

生活支援員 40h×(6÷9)=26.8h (常勤換算0.67名)

・夜間支援員 1名

 

*障がい区分4 ×名の場合

 ・管理者 兼 サービス管理責任者(常勤) 1名

世話人 40h×(6÷4)=60h (常勤換算1.5名)

生活支援員  40h×(6÷6)= 40h (常勤換算1名)

・夜間支援員 1名

 

*一つの施設に複数の障がい区分の方が入所される場合

生活支援員は上記の人員基準計算式で、障がい区分ごとに必要な時間数を算出したものを合計します。

 

 ・障がい区分3×3名、4×3名の場合

区分3)40h×(3÷9)=13.2h

(区分4)40h×(3÷6)=20h 合計33.2h (常勤換算0.83人)

 

3.損益の分岐点を見極める

  3-1 必要な費用を試算してみる

  3-2 見込まれる収入と比較する

     3-3 損益分岐点を見極める

  

3-1 必要な費用を試算してみる

 【例:人件費計算の設定金額】

・管理者兼サービス管理責任者―常勤(給与25万円)

・その他の世話人生活支援員―パート(時給950円)

・夜間支援員―パート(時給1,250円)

*千円未満四捨五入

 

*障がい区分3 ×6名の場合

・管理者兼サービス管理責任者  給与250,000円

世話人 週60h×4=月240h    228,000円

生活支援員 週26.8h×4=月107.2h102,000円

・夜間支援員 1日10h×30日=月300h 375,000円

 

人件費合計  955,000円

家賃光熱費等 360,000円

通信費・広告費・雑費等 60,000円

費用合計 1,375,000円

 

 

*障がい区分4 ×6名の場合

・管理者 兼 サービス管理責任者    給与250,000円

世話人 週60h×4=月240h   

228,000円

生活支援員  週40h×4=月160h

152,000円

・夜間支援員  1日10h×30日=月300h 375,000円

 

人件費合計 1,005,000円

家賃光熱費等 360,000円

通信費・広告費・雑費等 60,000円

費用合計 1,425,000円

 

 

*日中サービス支援型の場合は、世話人及び生活支援員のうち1人以上は常勤という要件があります。

*介護サービス包括型でも世話人生活支援員が常勤のケースはあります。これはあくまで目安として参考にしてください。

 

 

3-2 見込まれる収入と比較する ブログ⑥参照

 

【障がい区分3 ×6名の場合】 *千円未満四捨五入

 

(収入)

給付費 197,000円×6名

家賃光熱費等(利用者負担)60,000円×6名

収入合計 1,542,000円 

 

(費用)3-1参照

費用合計 1,375,000円

収支   +167,000円

 

 

【障がい区分4 ×6名の場合】 

 

(収入)

給付費 225,000円×6名

家賃光熱費等(利用者負担)60,000円×6名

収入合計 1,710,000円 

 

(費用)3-1より

費用合計 1,425,000円

収支   +285,000円

 

こうして大まかな収支を出してみます。

 

 

3-3 損益分岐点を見極める

 

収支をご覧になって「思いのほか収益が低い・・・」と思われたのではないでしょうか。

 

グループホームを運営するために必要な人員が決められているので、どうしても人件費が多くなります。

どのようにしたら、もう少し安定した収益があげられるでしょうか?

 

1.共同生活援助住居の定員を増やしてみる

2.複数の共同生活援助住居を開設する

3.ほかの加算が取れないか調べる

 

 

1.共同生活援助住居の定員を増やしてみる

まず定員を6名から7名にするだけでかなり収支が改善されます。

 

障がい区分3×6人→7人

収入合計 1,542,000円 →  1,799,000円

費用合計 1,375,000円 →  1,490,000円

収支   +167,000円 →    +309,000円  (142,000円増収) 

 

障がい区分4×6人→7人

収入合計 1,71,000円 →   1,994,000円

費用合計 1,425,000円 →  1,549,000円

収支   +285,000円 →   +445,000円(160,000円増収)

 

 

2.複数の共同生活援助住居を開設する

 

賃貸では物件の規模により、簡単に定員を増やせないことがあります。

その場合、定員4~5名の規模で共同生活援助住居を2つ開設するという方法もあります。(例:同じマンションに2施設開設など)

 

現在共同生活援助サービスを行っている事業所様でも、複数のグループホームを運営されているところが多く見られます。

 

3.その他

今回「夜間支援加算」のみで収支計算をしました。

 

加算については、そのほかにも「福祉専門職員配置等加算」・「視覚・聴覚言語障害者支援体制加算」・「看護職員加算」・「医療連携体制加算」他、要件を満たせば給付費に加算されるものがあります。

 これらの加算が申請できないかも調べてみましょう。

 

【終わりに】

どの事業を始めるにあたっても事業計画をたてることは基本です。

特に福祉事業においては、とても大切なことです。

 

「なんとかなる」と安易に始めて事業が成り立たなくなった場合、利用者の方の生活の場が奪われてしまうからです。

 

福岡市は、賃貸物件による開設は「設置費補助金」が申請できます。

これらの経済的支援も上手に利用して、共同生活援助事業が進められることを願っています。

 

 

最後までお読みいただきありがとうございました。

 

行政書士事務所 ほりうち(代表:堀内由紀)

連絡先:092-775-0658

yushalom0510☆gmail.com(☆を@に変えて送信ください)

 

 

 <参考資料>

 

・障害者総合支援法事業者ハンドブック2019年版 中央法規

 ・障がい福祉事業の開業・手続き・運営のしかた 伊藤誠 アニモ出版

 ・福祉ソフト:共同生活援助報酬額一覧表

 https://www.fukushisoft.co.jp/wp-content/uploads/seikyu-siryo/r01/etc/r01_etc_gh.pdf

 

 ・障害者の日常生活及び社会生活を総合的に支援するための法律に基づく指定障害福祉サービス等及び基準該当障害福祉サービスに要する費用の額の算定に関する基準(平成18年厚生労働省令告示第523号)

 

障碍者の日常生活及び社会生活を総合的に支援するための法律に基づく指定障害福祉サービス等及び基準該当障害福祉サービスに要する費用の額の算定に関する基準等の制定に伴う実施上の留意事項について(平成18年障発第1031001号)

 

 *福岡市で障がい者グループホーム(共同生活援助)の開設をお考えの方、障がい者グループホーム(共同生活援助)の運営(特に実地指導)に際しお困りの方は、ほりうちまでご連絡ください。

 

連絡先 092-775-0658

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